2018-01-01から1年間の記事一覧

絵画の中/室内装飾

絵画の中 世界へ 人間や鳥 原型を引き 文化式原型 移りつつある 生命 夢を 接ぎ合わせ 伝えられた 夜に オーニソガラム ウエストより 赤く 汚れは 正しい 牛飼い 模様 室内装飾 心をとらえ 写し出した 蠟燭を 汽車に 浮かべて ガラス器に 織り糸が 求める 色…

あんこ丸と食べること

■お話あんこ丸はまっしろな秋田犬。みんなからあーちゃんってよばれている。でもおとうさんとわたしだけ、いつもあんこ丸ってよんでいる。あんこ丸は食いしん坊だ。だいたいいち日のほとんどを、居眠りしたりごろごろしたりして、のんびり気ままにすごしてい…

嵐の王様

■お話毎年この季節が近づくと誰も彼もが慌ただしくトントンカンカン忙しく板を窓に打ち付けるあの御方がやって来る皆の名を呼びながらあの御方がやって来る新しい名を呼びながら暖かい風が吹き始め枯れた枝を震わせるか弱い小さな瞳が誘われ顔を覗かせる冷た…

あんこ丸と家族会議

あんこ丸はまっしろな秋田犬。みんなからあーちゃんってよばれている。でもおとうさんとわたしだけ、いつもあんこ丸ってよんでいる。あんこ丸はおばあちゃんによばれると、あまえさせてくださいってのどをならす。おかあさんによばれると、なにかくれるんで…

イオンモールの戦い

■夢と記憶の話イオンモールの二階で僕はダース・ベイダーと戦っていた。ライトセーバーが唸りを上げて宙を切り、青と真紅の光の残像とともに打ち合わされる。そばには七階まで続く巨大な吹き抜けが口を開け、僕が落ちていくのを手ぐすねを引いて待っている。…

家族の生活

■夢と記憶の話日が落ち始めた頃、僕は家を追い出される。古いアパートの軋む階段を降りて道路に出ると、小さな子供が一人でポツンと立っていた。ここにいたら車に轢かれてしまうかもしれないし、迷い子かと思い声をかける。するとその子は細い紐につながれた…

雨の目録

■夢と記憶の話I.暖炉 暖炉飾りの上に暗い雲が置かれている。薄い水蒸気の膜に大理石模様を透かし、冷ややかなうねりの間から渦巻く光を滲ませて、迫り来る嵐の予兆を告げる。II.額縁 集めるべき眼差しを失った額縁達。炉棚に並び、肖像を持たず、日焼けした…

■思い出静かな白線の内側に立ち真っ白な頁に目を落とす頁の上に淡い日が落ちて文字は四月の光を帯びる宙に溶け出す満ちた気配アナウンスが短く鳴響く人の疎らな広いホームに車両が連なり入って来るにわかに風が巻き起こり手の裡の頁がはためいた指に優しく触…

蟻と雨

■お話一匹の蟻が聞いた 「雨は降るの?」 聞かれた蟻は 「雨は僕といるよ」 と澄んだ声で言った一匹の蟻が聞いた 遥か遠く家から離れて 「僕と雨がいるの?」 聞かれた蟻は答えた 「君と僕が雨なんだよ」

五月

■夢と記憶の話五月の黒い水に浸かって産声を上げる夢を見る君は生まれたときに何を感じたの?君は生まれたときに何を思ったの?五月の暗い廊下の先で踊り子人形は回り続けるオルゴールから零れる音楽に合わせその影はくるくる部屋を包み込む君は生まれて嬉し…

マットレス

■お話仕事帰り、バスから降りた数歩先に、野生のマットレスが待ち構えていた。低い唸り声を上げ、牙を剥き出し、全身の毛を逆立てて、激しく僕を威嚇する。辺りを見回すも皆下を向いて、足早に去っていく。冷や汗が額から滴り落ちて、背筋が凍りつく。くすん…

ノアの海底二万里

■夢と記憶の話「272階まで潜るには氷が28個必要だ」映像の乱れた青白く点滅するモニター越しに博士が言った。僕達は薄暗い放送室を飛び出し、僕は理科室へ、彼女は3階の教室へと氷を探しに走り出した。校舎をつなぐ廊下の窓から外に目を向けると、辺りは全て…

写像

■感じたこと夜空に浮かぶ星を結び透明な三角形を作る不思議なことにどんな三角形を作っても裡に納まる内角の和はぴったりと180度になる夜空に輝く星を繋ぎ透き通った四角形を作る不思議なことにどのような四角形を作っても画き出される内角の和はちょうど360…

マグカップ

■いつかの日記窓辺から漏れる明かりに誘われてどこからか部屋に迷い混んだ蛾がマグカップを目指して飛び込んだ飲みかけの珈琲に羽を捕らわれて頼りない四肢で音もなく宙を掻き天井を映した暗く冷たい器の裡で少しずつ静かに命を小さく終えた

大工

■お話あるところに大工がいた彼はとても器用だったのでどんな家も建てることができた大きな家きれいな家立派な家彼の腕前はあまりに評判でいつも誰かのために忙しく家をコンコンギコギコ建てていたある時一人のお客がやってきたコツコツ貯めたお金を持ってや…

ベルとオッルとルッ

■お話木切れで作った小さな帆船、沈まぬように掌に納め、池のほとり、そっと水面に浮かべ、船尾を先へと押してやる。音も無く岸辺から、船首が水を掻きわける。やがてゆっくりと、水際から僅かに離れ、帆は静かに眠りに就く。船体が立てた引き波が、雲ひとつ…

夏の終わりの授業

■夢と記憶の話明るい教室の中で、高校生の僕は授業を受けていた。きれいに掃除された黒板には30センチ四方の写真が5枚並べて貼られている。それは人間のある動作を時系列に沿ってそれぞれ写したものだった。先生が教壇に立ち、僕たちに向かって授業を進める…

小さな王様

■お話その拍子は歩みの拍子 とことことゆったりとマントを引き摺って時にはお尻で裾を跳ね上げながら首を覆う半月を描く豊かな黒い襞襟を丸く膨らんだ気高い胸に飾り繊細な刺繍が施された足先で頷きながら小さな威厳を振り撒き歩く忙しく駅へと向かう人の群…

駐車場

■お話いつもなにげなく通り過ぎる駐車場にある日なにげなく目を向けたするとまだ新しいコンクリートの車止めにすらっと長い尻尾が生えていた気持ちよさそうに朝の淡い光を浴びてパタパタと気ままな拍子をとっていたまたある日のことなにげなく目を向けると尻…

窓が雨に濡れている

■2016/7/1の日記「誰もいないはずの家に電話をかけたら、誰かが受話器を取ったんです。だから急いで家の見回りをしてください」満員電車の中で中年の女性が必死に、携帯電話の向こうにいる相手に訴えかける。彼女はなぜ誰もいない家に電話をかけたのだろう?誰…

空はまだ明るい

■2016/6/30の日記小さな神社の鳥居の下で二人の高校生が立ち尽くす男の子は目をそわそわさせて不器用にシャツを持て余し腕を何度も組み替える女の子はじっと静かに俯いて肩まである髪で顔を隠し忍耐強く過ぎ去る時間を拒むその横を缶ビール片手にエイフェッ…

朝を迎える

■夢と記憶の話居間の長椅子に仰向けに横たわる父の左足から、石油が染み出していた。それは少しずつ踵の先から滴り落ちて、床に広がり、隣り合った台所を抜け、子供部屋に流れ着く頃には、向こう岸が見えないほどの青黒くぬらぬらとテカった川となっていた。…