お話

絵画の中/室内装飾

絵画の中 世界へ 人間や鳥 原型を引き 文化式原型 移りつつある 生命 夢を 接ぎ合わせ 伝えられた 夜に オーニソガラム ウエストより 赤く 汚れは 正しい 牛飼い 模様 室内装飾 心をとらえ 写し出した 蠟燭を 汽車に 浮かべて ガラス器に 織り糸が 求める 色…

あんこ丸と食べること

■お話あんこ丸はまっしろな秋田犬。みんなからあーちゃんってよばれている。でもおとうさんとわたしだけ、いつもあんこ丸ってよんでいる。あんこ丸は食いしん坊だ。だいたいいち日のほとんどを、居眠りしたりごろごろしたりして、のんびり気ままにすごしてい…

嵐の王様

■お話毎年この季節が近づくと誰も彼もが慌ただしくトントンカンカン忙しく板を窓に打ち付けるあの御方がやって来る皆の名を呼びながらあの御方がやって来る新しい名を呼びながら暖かい風が吹き始め枯れた枝を震わせるか弱い小さな瞳が誘われ顔を覗かせる冷た…

あんこ丸と家族会議

あんこ丸はまっしろな秋田犬。みんなからあーちゃんってよばれている。でもおとうさんとわたしだけ、いつもあんこ丸ってよんでいる。あんこ丸はおばあちゃんによばれると、あまえさせてくださいってのどをならす。おかあさんによばれると、なにかくれるんで…

蟻と雨

■お話一匹の蟻が聞いた 「雨は降るの?」 聞かれた蟻は 「雨は僕といるよ」 と澄んだ声で言った一匹の蟻が聞いた 遥か遠く家から離れて 「僕と雨がいるの?」 聞かれた蟻は答えた 「君と僕が雨なんだよ」

マットレス

■お話仕事帰り、バスから降りた数歩先に、野生のマットレスが待ち構えていた。低い唸り声を上げ、牙を剥き出し、全身の毛を逆立てて、激しく僕を威嚇する。辺りを見回すも皆下を向いて、足早に去っていく。冷や汗が額から滴り落ちて、背筋が凍りつく。くすん…

大工

■お話あるところに大工がいた彼はとても器用だったのでどんな家も建てることができた大きな家きれいな家立派な家彼の腕前はあまりに評判でいつも誰かのために忙しく家をコンコンギコギコ建てていたある時一人のお客がやってきたコツコツ貯めたお金を持ってや…

ベルとオッルとルッ

■お話木切れで作った小さな帆船、沈まぬように掌に納め、池のほとり、そっと水面に浮かべ、船尾を先へと押してやる。音も無く岸辺から、船首が水を掻きわける。やがてゆっくりと、水際から僅かに離れ、帆は静かに眠りに就く。船体が立てた引き波が、雲ひとつ…

小さな王様

■お話その拍子は歩みの拍子 とことことゆったりとマントを引き摺って時にはお尻で裾を跳ね上げながら首を覆う半月を描く豊かな黒い襞襟を丸く膨らんだ気高い胸に飾り繊細な刺繍が施された足先で頷きながら小さな威厳を振り撒き歩く忙しく駅へと向かう人の群…

駐車場

■お話いつもなにげなく通り過ぎる駐車場にある日なにげなく目を向けたするとまだ新しいコンクリートの車止めにすらっと長い尻尾が生えていた気持ちよさそうに朝の淡い光を浴びてパタパタと気ままな拍子をとっていたまたある日のことなにげなく目を向けると尻…