日記

マグカップ

■いつかの日記窓辺から漏れる明かりに誘われてどこからか部屋に迷い混んだ蛾がマグカップを目指して飛び込んだ飲みかけの珈琲に羽を捕らわれて頼りない四肢で音もなく宙を掻き天井を映した暗く冷たい器の裡で少しずつ静かに命を小さく終えた

窓が雨に濡れている

■2016/7/1の日記「誰もいないはずの家に電話をかけたら、誰かが受話器を取ったんです。だから急いで家の見回りをしてください」満員電車の中で中年の女性が必死に、携帯電話の向こうにいる相手に訴えかける。彼女はなぜ誰もいない家に電話をかけたのだろう?誰…

空はまだ明るい

■2016/6/30の日記小さな神社の鳥居の下で二人の高校生が立ち尽くす男の子は目をそわそわさせて不器用にシャツを持て余し腕を何度も組み替える女の子はじっと静かに俯いて肩まである髪で顔を隠し忍耐強く過ぎ去る時間を拒むその横を缶ビール片手にエイフェッ…